歴史的に北欧スエーデンでは伝統的な集団体操が定着していて、P・Hリング(1776~1839)により開発されたスエーデン体操は柔軟性、巧緻性、持久力を中心としたリズミカル運動の原型になって定着していた。
ドイツでは富国強兵の国家政策を背景にグーツムーツ・フリードリッヒヤーン・ジュピースの3大巨星による秀逸な学校体育や社会体育の基盤と伝統が定着し、戦後復興の過程で西ドイツ政府はエリ ートスポーツマンの育成よりも一般国民の健康づくり運動を重要視し、1960 年から「第二の道」による国民健康作りが計画推進された。それは 1975 年まで15年間に渉り連邦政府が中心になって1兆円規模の予算を投じて実施された「ゴールデンプラン」がヨーロッパにおける Trim 運動(体力づくり)の拡大に大きな影響をもたらした。
この Trim の要旨は米国の Fitness と同義語で、急速な現代社会の変革による現代人の心身のアンバランスな状況をトリミング(取捨選択)することによってトータルな心身のバランスを取り戻すことを意図したものであった。ドイツスポーツ連盟が主体となって、それまでの伝統的で閉鎖的なスポ ーツクラブが地域に開放され、公共の公園内にはトリムパルクが設置され、室内のスポーツシューレ(競技施設:競技場、室内競技場、体育館、プール、子供の遊び場など)が整備され、スポーツクラブによる全国民の健康づくりの壮大な計画と財政支援が実施された。
フランスでは一般的に乗馬やヨット・スキー・フェンシング・柔道なども含めて新旧のスポーツ文化が広がり定着している。そこには国家スポーツ指導員の資格制度が設定されていて、指導員の全てが一貫して養成・資格・雇用制度が適応され、専門家として派遣され広く堅実なスポーツ活動が推進されている。特にヨーロッパアルプスを背景にしたフランススキーの山岳ガイドやインストラクターの優雅であっても厳しいルールや安全な対応で多くのスキーヤーを支えている。また海洋レジャーとしてのヨット競技の広がりなども個人の自由を伝統とする国家で徹底した安全管理と指導体制が確立している。
デンマークはニルスブックによる特定職業による疲労回復やトータルな身体機能を維持するための調整体操(現在の日本のラジオ体操の原型)を普及させ、1920 年に開校されたオレロップ国民高等学校による OL 体操が有名で、一糸乱れぬ集団体操の原点でもある。因みに日本でも 1928 年(昭和 13 年)に逓信省保険局によるラジオ体操は現在も受け継がれ、殆どの国民が熟知実践している日本独自の健康プログラムとして国際的にも注目されている。
ヨーロッパ全般に個人的なレジャー意識が確立し自由に選択習得するクラブが門戸を開き、いつでも、どこでも、だれでもできる身体活動”を生活化するトリム運動が継承されている。